fMRI(機能的核磁気共鳴画像法)による脳機能実証実験

速読による学習効果と大脳の活動について〈要旨〉

首都大学東京大学院
妹尾 淳史 准教授
(文責・編集部)

1 記憶のメカニズム  私たちが物事や学習したことを記憶するメカニズムは3段階あると考えられています。まず、第一段階は「一時記憶」よばれる記憶です。
 第二段階は、「短期記憶」とよばれる記憶です。一時記憶に入った情報の中で注意的に選択された情報のみが短期記憶の中に蓄えられます。
 第三段階は、「長期記憶」とよばれる記憶です。短期記憶に対して何度も情報を繰り返しているうちに、その中の情報の一部は長期記憶として蓄えられます。短期記憶と異なり長期記憶に蓄えられた情報は永久的に忘れることがなく、しかも長期記憶の貯蔵庫には容量制限がありません。
2 速読と大脳生理学  速読の訓練を行う効能としては、脳の元気さの主観的な指標である言語系、感情系、自律系、運動系、および潜在系のそれぞれの度合いが上昇することが知られています。つまり速読による訓練は、心と身体の状態の総合的なレベルアップにつながるということになります。
 資格試験の勉強のように、暗記を中心とした学習を行う場合には、学習中の大脳の活動を活性化させることがより大切になります。
3 実験の目的  速読により心身の状態が向上することは先に述べましたが、それでは速読によって大脳のどこがどのように活動するのでしょうか? 速読中に大脳がどのような活動をするのかということを明らかにすることを目的に、fMRI(functional MRI;機能的MRI)という脳機能を計測する装置を使って実験を行いました。(図1参照)
4 実験の方法  メディアファイブで開発された学習ソフトの画面をディスプレイに表示し、速読を行っているときに、脳内でどのような活動がおこっているのか明らかにする実験を行いました。実験の結果を比べやすいように右利きで、速読経験の浅い元気で健康な若い男女5名(男性:3名 女性:2名)平均21.8歳を実験の被験者としました。
5 実験の結果  5名の被験者から得られた実験データを集団解析した結果は図2・図3の通りです。安静時と比較して速読時に脳が活動していると推定された場所を赤で表示しています。
  • ① 文字認識や言葉の理解に関係しているところが活動している。
  • ② 聴覚に関係しているところが活動している。
  • ③ 言葉の発音に関係しているところが活動している。
  • ④ 構音(口を動かす)に関係しているところが活動している。
  • ⑤ 一時的な記憶(短期記憶)に関係しているところが活動している。
  • ⑥ 迷路抜けなどのように、何か暗中模索する(何かに迷っている)と活動するところが活動している。
 長期記憶にはさまざまな場所が関連しているのですが、一時記憶から短期記憶の移行に必要な情動に大きく関係している脳の部位としては、扁桃体があります。扁桃体は、記憶の動機付けに関連しています。また、記憶をより長期の記憶に変換するときに働く部位として海馬があります。速読時には5名全員が扁桃体と海馬が活動していたことがわかりました。つまり、速読による学習は長期記憶にも関係があるといえます。
6 結語  速読経験の浅い人に対し、通常に読むよりも少し早い程度の速読をさせても言語に関係する脳の部分が大きく活動していることがわかりました。さらに、短期記憶だけでなく長期記憶に関係している部分も大きく活動していることがわかりました。速読が脳機能的にどのように活動するのかという研究はほとんどされてないのが現状ですが、今回の実験によりその一部が解明されました。
 メディアファイブの学習ソフトには速読だけでなく、速耳、速読+速耳などの機能もあります。これらについても実験を行い、解析作業を進めていますので、その結果についてもいずれご報告させていただきたいと思っています。皆さんが効率よく学習できる方法を、私たちはこれからも科学的な見地から研究していきます。
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